第23章 彼女はただ生きたい

野次馬たちが潮が引くように去り、石段には葉山立夏ただ一人が取り残されていた。

そしてもう一人。少し離れた場所には、この家庭内倫理劇の一部始終を目撃し、鶏卵が一つ丸ごと入りそうなほど大口を開けて呆けている川北憲司がいた。

川北憲司は歩み寄り、葉山立夏しげしげと眺めるように周囲を二周した。まるで希少生物でも見るような目つきだ。

「お前の旦那も、あの姑も、どいつもこいつもどうなってんだ? よくもまあ、お前をこんなところに置き去りにできるもんだな。あいつ……マジであの女を追っかけてったのか?」

葉山立夏は彼に取り合わず、ただ膝に手を当てて、再び立ち上がろうとしていた。

「おいおい、もういい...

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