第234章 一つの笑い話

葉山立夏は頷き、張り詰めていた交渉の緊張から解放され、口元に微かな笑みを浮かべた。

彼女は執務机へと歩み寄る。そこには、先ほど署名したばかりの覚書が静かに横たわっていた。

これは彼女が帰国して以来、初めて完全に自身の主導で勝ち取った、世界情勢をも揺るがしかねない契約だ。

西園寺京夜の影もなければ、西園寺グループという後ろ盾もない。

あるのは彼女自身と、彼女が手塩にかけて作り上げた技術だけ。

書類を手に取ると、紙面からはまだ乾ききっていないインクの匂いが漂ってくるようだった。

自らの運命を掌握しているという、かつてない確かな実感が胸の奥底から湧き上がってくる。

その時、スマートフ...

ログインして続きを読む