第251章 それはあなたのもの

「終わったわ」

彼女は手を引っ込め、立ち上がった。まるで先ほどまで極限まで集中していた人間が自分ではないかのように。

その夜、葉山立夏は夢を見た。

それは、二人が結婚して間もない頃の夢だった。

彼女が胃の痛みでソファにうずくまっていると、西園寺京夜が会社から急いで戻ってきて、不器用に甘い飲み物を淹れて渡してくれた。そして、ただ傍らに立ち、どうしていいか分からない様子で彼女を見つめていた。

あの頃の彼には、後になって生まれた疑心や傷つけ合いなどなく、ただどう表現していいか分からない不器用な気遣いだけがあった。

彼女は夢からハッと目を覚まし、胸の奥が微かに締め付けられるのを感じた。

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