第32章 立夏に会った

電話の向こうから、九条玲奈の嗚咽混じりの声が聞こえてきた。その響きは、いかにも弱々しく、頼りなげだった。

「立夏さんはどうなったの? もう危険はないの?」

彼女はしゃくり上げながら、途切れ途切れに言葉を紡ぎ、怯える被害者を演じていた。

西園寺京夜は沈黙を守ったまま、冷淡な観客として、彼女の自作自演の独り芝居に耳を傾けていた。

「あの子ったら、私が毒を盛って殺そうとしたなんて言うのよ。私がそんな恐ろしいこと、するわけないじゃない。あまりに情緒不安定だったから、なだめようと近づいただけなのに、いきなり飛びかかってきて噛みつかれたの……」

九条玲奈の声には、溢れんばかりの悔しさが滲んでい...

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