第35章 彼女は目覚めた

机の上には開かれた財務諸表があり、その傍らには一冊のノートが置かれていた。端正な筆跡で、びっしりと注釈が書き込まれている。

彼はこれまで、彼女が家で何をしているかになど関心を払ったことがなかった。自分の周囲にいる令嬢たちと同じように、日々の生活といえばショッピングやエステ、アフタヌーンティーに明け暮れているのだろうと思い込んでいたのだ。

だが、違った。

彼はノートを手に取り、文字の上を指先でなぞった。彼女がこれを記した時の指先の温もりが、そこから伝わってくるような気がした。

パラパラとページを捲ってみる。そこには財務の知識だけでなく、いくつかのレシピも記されていた。行間からは、生活へ...

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