第55章 痛みは、もう何でもない

彼女の瞳は静まり返っていた。まるで死んだ水のように凪ぎ、そこには何の感情も映っていない。その目は無言のうちに問うているようだった。

――私を君の仲間の集まりに連れてきたのは、この茶番を見せつけるためだったの?

西園寺京夜は、グラスを握る指先に力を込めた。

彼女のその態度が、癪に障る。

彼が求めているのは屈服だ。頭を下げ、過ちを認め、泣いて許しを乞う姿だ。こんな、死人のような沈黙の対峙ではない。

九条玲奈は、二人の間に走った一瞬の緊張を敏聡く嗅ぎ取った。口元の笑みを深め、フルーツジュースのグラスを手に取ると、葉山立夏のそばへと歩み寄る。

「立夏お姉さん、あんな人たちの戯言なんて気に...

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