第56章 その駆け引きはやめろ

彼は腕に力を込め、彼女を自身の骨肉に埋め込まんばかりに抱きしめた。

「失せろ」

九条玲奈の顔から、笑みが瞬時に凍りついた。

西園寺京夜のあんな目つきは見たことがない。彼女は無意識に後ずさり、背後の村上にぶつかってしまった。

廊下は、死のような静寂に包まれた。

さっきまで姦しかった男女は、一斉に首を締め上げられたかのように黙り込み、全身から恐怖のオーラを放つその男を驚愕の眼差しで見つめている。

西園寺京夜は彼らに一瞥もくれず、葉山立夏を横抱きにしたまま、大股でエレベーターホールへと向かった。

エレベーターの扉が閉じてようやく、窒息しそうな威圧感が薄らいでいく。

村上は額の冷や汗...

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