第73章 彼女はやはり葉山蓮に会いに行った

周囲の追従を背に、九条玲奈は泥のように酔いつぶれた西園寺京夜を支え、優雅な足取りでクラブを後にした。

後部座席に身を沈めた瞬間、彼女の顔に張り付いていた笑みが、寸刻みで冷え切っていく。

彼女はシートに身を預け、苦悶に眉を寄せる男を見下ろした。

――立夏、だと?

どれほどの策を弄し、どれほどの時間をかけて彼の隣までたどり着いたと思っているのか。それなのに、泥酔して意識も混濁した彼が呼んだのは、あの女の名前だった。

これこそ、彼女の人生における最大の屈辱だ。

構わない。

彼女は心の中でそう呟く。

たかが、一本の棘(とげ)。抜いてしまえばいいだけの話だ。

葉山立夏という人間さえこ...

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