第85章 彼は彼女を連れ戻す

西園寺京夜の瞳が、瞬時に凍てついた。

また、九条玲奈だ。

彼女への落とし前をつける暇さえ与えず、性懲りもなく先手を打って魔の手を伸ばしてきたのだ。

「見張っておけ」西園寺京夜は電話を切った。

かつてない無力感が、彼を苛んでいた。

その時、携帯電話が一度だけ震えた。秘書からの暗号化されたメールだ。

西園寺京夜がそれを開くと、中には写真が一枚だけ添付されていた。

背景は、とある花屋だ。

橘カオリの秘書が、真っ白な香水百合(カサブランカ)の大束を抱えている。

それは、葉山立夏が最も愛した花だった。

そして写真の右下、目立たない位置にあるガラスドアに、小さな配送伝票が貼られていた...

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