第107章

***テッサ視点***

サシャの部屋へ戻る道すがら、あたりは静かだった。でも、さっきまでの静けさとは違う。

今回は穏やかな静寂だ。

言葉にしなくても通じ合える、そんな静けさ。水面下で広がりつつある、新たな始まりの予感に満ちていた。

ケインは私のすぐそばを歩き、片手で食事の入った紙袋を持ちながら、もう片方の手は私の手の近くを彷徨っていた。まるで、二度と触れ合うのをやめたくないとでも言うように。廊下は薄暗く静まり返り、パックハウスの喧騒も、厚い壁と閉ざされたドアの向こうで低い唸りのようになっている。

サシャの部屋に着く頃には、先ほどまで抱えていた重苦しい恐怖は薄らいでいた。代わりに、儚く...

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