第126章

テッサ視点

上質な陶器と銀食器が触れ合う澄んだ音が、デザートの到着を告げた。繊細な皿に盛り付けられたダークチョコレートのムース。添えられた新鮮なラズベリーと、とろりとかかったラズベリーソースが彩りを添えている。

濃厚なココアの香りが漂い、すぐそばのバルコニーから風に乗って運ばれてくるジャスミンのほのかな芳香と混じり合う。

私はフォークを手に取った。けれど、その滑らかで甘美なムースの表面が、指先を通してふいにひどく重々しいものに感じられた。

胃の奥に落ち着かないざわめきが広がり、私はごくりと喉を鳴らした。意を決して顔を上げ、テーブル越しにケインを見る。彼の瞳が私を捉えた。その眼差...

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