チャプター 85

ケイン視点

一歩進むごとに、空気は重さを増していった。

より濃く、より湿り気を帯びていく。

壁の間隔はさらに狭まり始め――今や肩幅がやっと通るほどしかない――まるで石壁そのものが、俺たちを引き返させようと圧迫してくるようだ。この先に待ち受ける地獄から遠ざけるために。

気温も下がっているようだった。つまり、もう鋼鉄の施設の地下にはおらず、敷地の外へ出たということだろう……。

ブーツがくるぶしほどの深さの水たまりをバチャバチャと踏みつけるたび、その鋭い反響音が、遠くの銃声のようにトンネル内を駆け抜けていく。

だがその時……新たな匂いが鼻をついた。

さっきま...

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