第九十二章

ケイン視点

俺は死に物狂いで走った。一度も止まらなかった。

あばらの下で筋肉が焼けつくように痛んでも、足は止めなかった。

頭にあるのはテッサのことだけだ。

今行くぞ、エンジェル……。

ついに木々が途切れ、錆びついたコンテナのそばにある空き地に出た。

霜の降りた草の上に、俺のパーカー一枚きりでうずくまっているサーシャを置いてきた場所へ駆け寄る。だがそこには、彼女のそばにかがみ込む人影があった。

セスだ。

俺は走る勢いのまま変身を解き、狼の姿の名残が消えると同時に、両足で強く地面を踏みしめた。二人に近づくと、セスが自分の服をさらにかけてやっているのが見え...

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