第100章

黒い煙がドアの隙間から侵入し、瞬く間に部屋中を覆い尽くした。

入り口に目をやると、大柄な人影が飛び込んでくるのが見えた。

だが、顔は見えない。

「紗夜……」

煙の中、彼は私に向かって猛然と駆け寄ってきた。

「火事だぞ、なぜ逃げない!」

荒い呼吸。声は酷くかすれている。

だが、その動きは迅速だった。

彼は私をベッドから抱き上げると、濡らした上着を私の頭に被せ、一陣の風のように外へと走り出した。

湿った上着が、濃煙を遮断してくれる。

上着越しに、彼の太い腕が私を胸元に押し付けているのがわかった。

薄い生地を通して、力強い心音がはっきりと伝わってくる。

周囲の喧騒は相変わら...

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