第116章

床下の様子を確認する間もなく、誰かの体温が残るトレンチコートがふわりと肩にかけられた。

反射的に顔を上げると、そこには立花謙一の氷のように冷たく、端正な顔があった。

全身が強張る。

「あなた……」

何か言おうと口を開いたが、喉が詰まって激しく咳き込んでしまった。

「無理をするな、落ち着け」

立花謙一の大きな掌が、私の背中を優しく撫でる。

私は身をよじって彼の手を避けた。触れられたくなかった。

さっきまでの抵抗で、体力はもう限界に近かった。

だが、ボディガードに押さえつけられ、床に這いつくばっている佐川団長の姿を見て、私は最後の力を振り絞ってベッドから降りた。

足取りはおぼ...

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