第142章

「小林さん、ターゲットはもう中ですよ」

 私立探偵の車に乗り込むなり、彼は私に双眼鏡を手渡してきた。

 通りの向かいにあるのは、プライバシー保護に優れた一軒の邸宅だ。

 こちらの位置と角度の問題で、レンズ越しに見えるのは誰かと話している周防春香の姿だけ。相手が誰なのかまでは確認できない。

「彼女の話し相手、誰だかわかる?」

「いいえ。私が到着した時には、周防春香はすでに入っていましたから」

 探偵は首を横に振り、補足するように続けた。

「ただ、この家の登記情報を調べてみたんですが、三週間前に周防春香の名義に変更されています。ですが、元の所有者の情報は完全にブロックされていました...

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