第144章

立花謙一を引き止めることは叶わず、私は運転手に連れられて先にレストランへ向かうしかなかった。

だが、胸騒ぎがどうしても消えない。

「小林さん、到着いたしました」

車がエントランスに停まる。

しかし私は降りようとせず、運転手は困惑したように声をかけた。

私はハッと我に返ったが、車を降りるつもりはなかった。

「立花謙一のところへ連れて行って」

運転手は困り果てた表情を浮かべる。

「しかし、若旦那様がどちらへ行かれたのか、私にもわかりかねまして……」

胸の奥で、不安の影が色濃くなっていく。

コンコン。

不意に窓ガラスが叩かれた。

反射的に振り返ると、佐川元衡が私に向かって手...

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