第17章

暫くためらってから、私は震える手で通話ボタンを押した。

「紗夜、僕だ」

受話器の向こうから聞こえてきたのは、彼の人柄そのもののような、春風のごとく温かく心地よい声だった。

彼の名は周防玉輝。私の先輩であり、大学時代のダンスパートナーでもある。

私たちはかつて、何度も手を取り合って踊った仲だ。

ただ、私には踊りに身が入らない時期があり、四年に一度の国際コンクールを逃してしまった過去がある。

あの日を境に、先輩との差は雲泥の如く開いてしまった。

彼は若くしてダンス界の主要な賞を総なめにし、誰もが憧れる「バレエの王子様」となった。

今や国際的にもその名を轟かせる、バレエ界の旗手だ。...

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