第211章

立花謙一が耳元で何かを言っているのは分かったが、言葉としては一文字も頭に入ってこなかった。

意識が宙を彷徨い、ただ彼のされるがままになっていた。

「小林紗夜」

「小林紗夜?」

「小林紗夜!」

はっと我に返り、私は呆然と彼を見つめた。

「そんな顔をするな。新谷先生は最悪のケースを口にしただけだ。今のところ発作の頻度も多くないし、まだ最悪の事態には至っていない」

立花謙一は私の頭を撫で、慰めようとしていた。

私は顔を上げ、少し焦点の合わない瞳で彼を見た。

「そんなの、ただの気休めよ。新谷先生は、この損傷は不可逆だって言ったわ。私はこれから、知覚も認知も失って、ただの抜け殻になっ...

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