第258章

立花謙一は少し顔を傾け、私の額にそっとキスをしてから慰めるように言った。

「君は安心してコンクールに集中してくれ。他のことは俺が解決するから」

その言葉に心が温かくなり、思わず口角が上がる。

「私がこのまま行っちゃって、二度と戻ってこないかもしれないって怖くないの?」

立花謙一は低く笑い声を漏らした。

「君は必ず戻ってくる」

彼の口調は落ち着き払っており、そこには一絲の疑念もなかった。

私の心はふっと軽くなり、最後に残っていた躊躇いも跡形もなく消え去った。

「ええ、絶対に帰ってくるわ」

翌日。

立花謙一が空港まで送ってくれることになった。

出発前、母はわざわざ立花のお婆...

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