第269章

頭の中が、一瞬だけ真っ白になった。

その時、チャイムが鳴った。

心臓がドクンと大きく跳ねた。

早足でドアへ向かい、勢いよく開けると――

黒いコートを羽織った立花謙一が、凛とした長身でそこに立っていた。

どうして、彼がここに?

胸が激しく打ち鳴り、何かを口にする間もなかった。

立花謙一は一歩踏み込むなり、長い腕で私の腰を強く抱き寄せた。そのままぐいと引き込まれ、反転させられたかと思うと、ドアに押し付けられていた。

次の瞬間、深夜特有の冷気を纏った彼の吐息が降り注ぐ。

「いつ着い……」

不意に、唇が塞がれた。

声は喉の奥に飲み込まれた。

彼のキスは、次第に切迫感を帯びてい...

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