第29章

周防玉輝が帰って間もなく、両親が戻ってきた。

母さんは部屋に入るなり、不思議そうに私に尋ねた。

「あれ、謙一さんが付き添ってくれるんじゃなかったの? どうして一人なの?」

立花謙一が、私に付き添う?

私は呆気にとられ、ついさっきドアの外を一瞬よぎった人影を思い出した。

まさか、あれが彼だったの?

いや、そんなはずはない。

もし彼なら、間違いなく部屋に押し入ってきて、先輩がなぜ私に会いに来たのか問い詰めるはずだ。あるいは、私と先輩を二人まとめて罵倒しただろう。

あんなふうに、音もなく立ち去るなんてあり得ない。

「わからないわ」

父さんが口を挟んだ。

「大丈夫だ。謙一君...

ログインして続きを読む