第35章

「まさかこんなところで会うなんてね。見たところ、その偽物、随分と深手を負ったようじゃない」

周防春香は他人の不幸を喜ぶような表情で言い放った。

「そんな貧乏くさい恰好で、謙一と張り合おうだなんて、身の程知らずもいいところよ!」

けんの腕の筋肉が強張るのを感じ、私は宥めるように彼の手を軽く叩いた。

そして顔を上げ、周防春香を睨みつける。

「わざとでしょう」

周防春香は私の視線から逃げるように顔を背け、虚勢を張って反論した。

「でたらめ言わないで」

私は淡々と言葉を続けた。

「その車、立花謙一が今年買ったばかりのものよ。パーツも内装もすべて最上級の特注品だし、定期点検も欠かして...

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