第42章

近づくや否や、周防春香は立花謙一の腕にしがみつき、泣きじゃくりながら訴えた。

「謙一、助けて! 殺されるわ!」

その悲鳴は、静まり返った宴会場に落ちた雷鳴のようだった。

一斉に視線が私たちに突き刺さる。

立花謙一は真っ先に私の手を離し、自分のジャケットを脱いで彼女の肩にかけた。

それからようやく口を開く。

「誰に殺されそうになったんだ?」

私はゆっくりと手を下ろした。何気なく顔を上げると、周防春香の悲憤に満ちた瞳と目が合う。

心臓が音を立てて落下した。

「あの女よ!」

周防春香は私を指差し、震える声で言った。

「さっき会場を間違えちゃって、スタッフに道を訊いたの。案内す...

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