第90章

「謙一さん、シャワーを浴びて待ってるわね」

周防春香は頬を染め、媚びを含んだ視線で彼に合図を送った。

立花謙一の視線が私の横顔をかすめ、彼は素っ気なく鼻を鳴らしただけだった。

それでも周防春香は目を輝かせ、満開の花のように笑ってみせる。

直視に耐えない。胃の奥から強烈な不快感が込み上げてくる。

私はたまらず立ち上がり、外の空気を吸いに玄関へと向かった。

十分近く待っただろうか。ケンの姿はまだ見えない。

メッセージを送ろうとした矢先、夜の闇の中から、大きな花束を抱えた彼が歩いてくるのが見えた。

「それ……」

「君のために買ってきたんだ。気に入った?」

ケンは花束を私の胸に押...

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