第92章

立花謙一の反応は鋭かった。とっさに身を翻し、それを避ける。

バシャッ、と音を立てて、コップ一杯の牛乳が床にぶちまけられた。

「何をする!」

「よくもそんな口が利けるわね?」

私は空になったコップをテーブルに叩きつけた。

「自分でもわかっているでしょう?」

立花謙一の顔色が、みるみるうちに変わっていく。

そして、私の背後に視線を釘付けにした。

「彼女に話したのか?」

「謙一……」

周防春香の声には、怯えたような響きが含まれていた。

二人の間に流れる不穏な空気を無視し、私は冷ややかな視線を立花謙一に向けた。

「もう話すことなんてないわ」

「立花謙一、あなたが周防春香を大...

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