第十一章

オードリー視点:

ノアがようやく教室の中に消えていくのを見届け、私は小さく息を吸い込んで気持ちを落ち着けようと、何度か瞬きをした。

溢れそうになった涙は、純粋な意志の力だけでまぶたの裏に閉じ込められた。

私、どうしちゃったんだろう? 私はノアの母親じゃないのに。

でも、彼が人生の節目となる一歩を踏み出すのを見ていると、圧倒的な感情が押し寄せてきたのだ。

「もう行かなくちゃ」私はキャスパーから顔を背けて言った。「家で仕事が待ってるから」

一歩も踏み出さないうちに、彼の手が私の手首を掴んだのが分かった。力強いけれど、優しい感触。

流れるような一つの動きで、彼は私を自分の方へと引き寄せ、予期せぬ抱...

ログインして続きを読む