第117章

ジェームズ視点:

専用エレベーターのドアが開いたとき、私は言葉を失うような光景を目の当たりにした。

ウォール街の「キングC」ことソーントン氏が、まるで初キスを終えた十代の少年のように一人で微笑んでいる。

キャスパー・ソーントンの下で働き始めてもう八年近くになるが、その間、彼が笑うのを滅多に見たことがなかった。

数十億ドル規模の取引をまとめたときに、口の端をわずかに上げるくらいだろうか。

息子さんが何か特筆すべきことを成し遂げたときに、誇らしげな表情を一瞬見せるくらい。

だが、心からの、無防備な笑顔となると? ほとんど皆無だった。

だからこそ、私はタブレットを落としそうになったのだ。

「ジェー...

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