第153章

イーサン視点

太陽が昇りきらないうちに起きると、母はもう玄関ホールを行ったり来たりしていた。

クリーム色のシャネルのスーツについた見えない皺を伸ばしながら、必死に花の飾り付けを直している。

「イーサン、早く来てくれて助かったわ」

母は不安げに両手をせわしなく動かしながら、俺に駆け寄ってきた。

「私、ちゃんとして見えるかしら?お父様はこのスーツでいいって言ったけど、今になって何もかも不安になってきちゃった」

「完璧だよ、母さん」俺はそう言って、落ち着きなく動く母の手を握った。「深呼吸して。公式の晩餐会じゃないんだから」

「ほとんどそんなものでしょう」母はそう呟くと、俺から身を引い...

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