第4章

廊下で翔太がため息をつくのが聞こえる。「ああ、伝記文学賞です」

「すごいですね」と舞子が言う。だが、その声はどこか詰まったようだ。「あなたが……その、まさかあなたが……」

「本物の作家だったなんて?」翔太の声に棘が混じる。「ああ、よく言われます」

気まずい沈黙が落ちる。それから、足音が聞こえた。舞子はおそらく、みんなに知らせようと急いで戻っているのだろう。

翔太が私たちの部屋のドアを開けた。疲れた顔をしている。

「やれやれ」と彼は言った。「これで、目立たないようにするのもおしまいだな」

彼はベッドに腰を下ろし、散らばった私の法律関係の書類の隣に座った。「この週末は、あの賞の話が出ずに乗り切れるかと思ってたんだがな」

「私もよ。でも、舞子さんに全部聞かれちゃったわね」

「だろうな。スパイみたいに廊下に潜んでいたからな」

私は書類をまとめ始める。「この週末は、もっと面白くなりそうね」

二十分後、部屋のドアがノックされた。恵子さんだった。私の生みの母は、うろたえているように見えた。

「玲文さん、あなた。少しお話できるかしら? みんなで。家族として」

彼女について階下へ向かう。リビングは人でいっぱいだった。武さんと恵子さん。舞子さんと、その夫の篠原隆さん。隆さんとは初対面だ。彼は石油会社の重役といった風貌の、長身のハンサムで、居心地が悪そうにしている。

私たちが入っていくと、全員が振り向いた。彼らが私たちについて知っていると思っていたすべてを、値踏みし直しているのが肌で感じられた。

「それで」と武さんがゆっくりと口を開いた。「翔太くんは、伝記文学賞を受賞したんだな」

「はい」と翔太は簡潔に答えた。

「伊東博文の伝記でね」と恵子さんが付け加える。まるで私たちのことを調べていたかのようだ。

舞子はソファに座り、苦いものでも飲み込んだような顔をしている。「なんて……意外だわ」

「そうですか?」と私は尋ねる。「翔太は何年も前から執筆活動をしていますよ」

「そうだが、伝記文学賞となると話は別だ」と武さんが言う。「たいした功績だ。非常に名誉なことだよ」

その言い方で、彼が私たちの価値を再計算しているのが明らかだった。私たちはもはや、哀れまれるべき貧しい親戚ではないのだ。

隆さんが初めて口を開いた。「その賞には賞金がついてくるんだろう? 現金で」

翔太は頷いた。「ええ、多少は」

「いくら?」と舞子がぶっきらぼうに尋ねる。

「舞子」と恵子さんが鋭く言った。

しかし、舞子は引き下がらない。「妥当な質問でしょう。翔太さんが受賞したのは素晴らしいことだけど、現実的に考えましょうよ。教授の給料は、賞をもらったからといって、やっぱり教授の給料よ」

彼女は、その価値を矮小化しようとしている。実際よりも大したことがないように見せかけようとしているのだ。

「賞金が問題なのではありません」と私は慎重に言った。

「もちろんそうだ」と武さんが同意する。「名誉こそが計り知れない価値を持つ。それが開く扉。もたらされる機会」

今や彼は興味津々だ。今や私たちは、彼の注意を引く価値があるのだ。

誰もが返事をする前に、外で騒ぎが起きた。誰かの呼ぶ声。玄関のドアを慌ただしくノックする音。

恵子さんが応対に出る。彼女は三人の人物を連れて戻ってきた。制服からしてリゾートのスタッフだろう。しかし、彼らは何かに興奮している様子だった。

「高田奥様」と、そのうちの一人が息を切らしながら言った。「お騒がせして申し訳ありません。ですが、スキーのインストラクターたちが、お客様のことでお尋ねしたいことがあると……」

彼は私たちの方を見た。「十代のお子さんが二人いらっしゃるご家族ですよね?」

恵子さんは混乱した顔で尋ねた。「あの子たちが何か?」

「ええ、奥様。その方たち、もしかしたら有名人ではないかと」

部屋が静まり返った。

スキーインストラクターが前に進み出た。昨日の昼食の時にいた、あのインストラクターだ。「やはり見覚えがあると思いました。水原翼さんはもちろん、フリースタイルの世界ジュニアチャンピオン。そして水原奏さんは先月、国際青少年選手権大会で優勝したばかりです」

舞子の顔が真っ白になった。「二人とも?そんなの、ありえないわ」

「そうです、奥様、本当です」

もう一人のインストラクターが熱心に頷く。「ネットで調べたんです。翼くんはスキー専門誌に三度も特集されていて、奏ちゃんは自身のスポンサー契約も持っています」

「スポンサー契約?」と隆さんが尋ねる。

「ええ、そうです。複数のブランドが彼女と契約したがっています。全国で最も将来有望な若手スキーヤーの一人と見なされているんですよ」

舞子の顔が崩れていくのを見る。公立学校だとか、ちゃんとしたトレーニングを受けていないだとか、彼女が口にした見下したようなコメントの数々。私たちの生活についての彼女の思い込みのすべて。

「彼らと一緒に写真を撮らせていただくことは可能でしょうか?」と最初のインストラクターが尋ねる。「リゾートのSNS用に。これはリゾートにとって大きな宣伝になります」

武さんは満足そうだ。「もちろん。翼くんと奏ちゃんは今どこに?」

「上の階です」と私は答える。「自分たちの部屋に」

「私が呼んでくるわ」と恵子さんが素早く言い、階段の方へ急いだ。

インストラクターたちは興奮で跳ね回らんばかりだ。「信じられない。まさか本物のチャンピオンがここに滞在しているなんて、夢にも思いませんでした」

舞子がようやく声を取り戻した。「きっと、それはとても素晴らしいことなんでしょうけど――」

「素晴らしい?」とインストラクターの一人が遮る。「奥様、この子たちはオリンピックの有力候補ですよ。翼くんはすでに極限スキーチームからスカウトされています」

オリンピックの有力候補。あまりの誇らしさに、体がよろめきそうになるほどの衝動を感じた。

翼と奏が恵子さんと一緒に階下へ降りてきた。二人は注目を浴びて戸惑っているようだ。

「やあ」と翼がインストラクターたちに声をかける。「どうしたの?」

「写真を撮らせてもらえないかと思って」と最初のインストラクターが説明する。「それから、私たちのために用具にサインをしてもらえないかな? 他のインストラクターたちは、君たちがここにいるって知ったら、卒倒するだろうな」

奏が私に視線を送る。私は頷いた。彼らは写真のためにポーズをとり、用具にサインをした。リゾートのスタッフは、まるで有名人のように彼らを扱った。

その間ずっと、舞子はソファに座り、まるで殴られたかのような顔をしていた。彼女の完璧な優越感は、皆の目の前でひび割れていく。

インストラクターたちがようやく立ち去ると、部屋は静寂に包まれた。

武さんが咳払いをする。「うむ。これはすべて、非常に……感銘深いな」

「素晴らしいわ」と恵子さんが言う。彼女は心から嬉しそうだ。「本当に誇らしいわ」

しかし、舞子はどうしても諦めきれない。「ただのスポーツでしょう」と彼女は突然言った。「ええ、運動神経がいいのは結構なことよ。でも結局のところ、スキーにどんな未来があるっていうの?」

皆が彼女をじっと見つめる。インストラクターたちがオリンピックの可能性やスポンサー契約について説明し終えたばかりだというのに。

「どうやら、かなり良い未来があるみたいだがな」と隆さんが乾いた声で言った。

舞子の頬が赤く染まる。「ただ、物事を大局的に見ることが重要だと思うの。スポーツでの成功なんて、とても……一時的なものよ。教育は永遠だわ」

彼女は今や、藁にもすがる思いだ。たった今起こった出来事を貶めるための、何らかの方法を見つけ出そうとしている。

「その通りですわ」と私は冷静に言う。「教育は重要です」

舞子は、何かを勝ち取ったかのように頷いた。

「だからこそ、二人とも大学進学用の特別クラスを取っているんです」と私は続ける。「奏はすでに、いくつかの大学から合格通知をもらっています。全額給付の学業奨学金付きで」

さらなる一撃。舞子の口が、魚のように開いたり閉じたりする。

彼女が返事をする前に、奏の電話が鳴った。彼女は発信者番号を見て眉をひそめる。

「知らない番号だわ」と彼女は言う。

「出てみなさい」と私は言った。

「もしもし?」

「水原奏さんですか? 極限スキーチームの松井コーチと申します。トレーニングキャンプの件でお電話いたしました」

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