第101章

赤井お婆さんには、弦子の言外の棘など聞き取れなかった。ただ焦ったように、

「もう、あんたもいい歳なんだから……」

そう言いかけたところで、コン、コン、と控えめなノックが響いた。

赤井弦子が顔を上げ――そのまま固まる。

戸口に立っていたのは、背筋の伸びた男だった。ダークカラーのコートを羽織り、静かにこちらを見ている。

「日野伊風……?」

弦子は反射的に名を呼び、すぐに視線を逸らした。

日野伊風は室内へ入り、まず赤井お婆さんへ軽く頭を下げる。

「赤井お婆さん。お見舞いに来ました。それと、弦子さんと萌子ちゃんを迎えに」

一拍置き、声を落とした。

「お加減は、少しは良くなりました...

ログインして続きを読む