第103章

林田朔夜はスポーツウェアに着替え、二人の子どもに別れを告げてから家を出た。

相手は筋金入りのテニス好きだと聞いている。だからこそ、商談の場所をあえてテニスコートにした。

相手の好みに合わせる。それも誠意のうちだ。

帰国してから最初の「本命の協業先」でもある。失敗はしたくなかった。

車内で、アシスタントが資料をぱらぱらとめくりながら、何気なく言った。

「噂ですけど、SK会社の柳川部長もこの案件、動いてるみたいです」

柳川部長――?

林田朔夜は一瞬、手を止める。

「柳川夏苑?」

「はい、アダムさん。どうしてご存じなんですか?」

林田朔夜はふっと笑っただけで、答えなかった。

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