第107章

A市の花屋。

「またお花ですか? いつもの三種類でよろしいですか」

店長がにこにこと声をかける。手元はもう慣れたもので、迷いなく花を選び始めていた。

この客は毎日、決まってこの時間に来る。そして毎日、同じ花を買う。店長にとっては、もはや説明のいらない常連だった。

藤原承弦は小さくうなずき、脇に立って待つ。

小さな雛菊、向日葵、フランネルフラワー。

店長は手際よく包み、差し出しながら、つい余計なひと言を添えた。

「毎日奥さまにお花を買っていかれる方なんて、そうそういませんよ。ほんとに、お優しいんですね」

藤原承弦は答えない。代金を払い、花束を受け取って、暮色の街へ溶けるように歩...

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