第119章

「千之お嬢さま、はじめまして。周防グループの杉本保奈と申します。噂どおり……本当にお美しい方ですね」

杉本はにこやかに歩み寄り、林田朔夜の顔に視線を留めた一瞬、目尻の細かな皺までふっとほどけた。

林田朔夜はその名を聞いて、わずかに目を瞬かせる。

周防グループ――周防島一の会社。

仮死で姿を消す前に、彼とは連絡を断った。それから数年、いっさい音沙汰もない。

帰国してから、周防グループの噂だけは耳に入っていた。

周防島一はすでに主要事業の大半を任され、後継者の座は揺るがない――そんな話だ。

朔夜は胸の奥のざわめきをそっと押し込み、形のいい笑みを浮かべてグラスを合わせた。

「杉本さ...

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