第121章

藤原承弦は、林田朔夜を深く見据えた。

朔夜はその灼けるような視線に気づかないふりをしたまま、静かな顔で彼を見返す。

「藤原さん、私に何かご用でしょうか」

藤原さん。

その呼び方に、承弦の思考が一瞬止まった。

彼女が、こんなよそよそしく丁寧な声で自分を呼んだことなどない。

「朔夜……」

喉の奥がざらつく。声が思うように出ない。

「朔夜って、誰のことですか?」

林田朔夜は首をかしげ、純粋に不思議そうな調子で言った。

「藤原さん、人違いでは?」

藤原承弦の眉間がきつく寄る。声は冷たく、頑なだった。

「朔夜。俺を知らないふりか?」

朔夜はまっすぐに彼を見る。逃げない、濁らな...

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