第145章

林田朔夜は、結局――藤原承弦をひとりにしなかった。

ソファの上。彼の腕にきつく抱え込まれ、身動きが取れないまま、複雑な気持ちで目を閉じる。

その夜、眠りは浅かった。

藤原承弦が、途切れ途切れに寝言を繰り返す。ときどき「お婆さん」と呼ぶ声は、子どもみたいに頼りなく震えていて――けれど、もっと多かったのは。

「朔夜……」

彼女の名だった。

何度も、何度も。聞こえないのが怖いみたいに。消えてしまうのが怖いみたいに。

林田朔夜は目を固く閉じたまま、胸の奥がひりつくのを感じる。

自分がそばにいた頃、彼が見ていたのはいつだって柳川夏苑だったのに。

自分が離れたら、呼ぶのは――自分の名前...

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