第146章

彼女は唇を開きかけ――結局、口から出たのはその言葉だった。

「もう、あなたのこと……愛してない」

声は大きくない。なのに藤原承弦は、息の仕方を忘れたみたいに胸が詰まった。

瞳の奥に残っていた最後の光が、すうっと消える。

俯いたまま、涙が床に落ちた。

その雫は、林田朔夜の心にも落ちた気がした。

胸の中に広がるのは、途方もない滑稽さと、荒涼。

藤原承弦は――いま、自分のために傷ついているの?

かつて、どこまでも高く、決して頭を下げなかった男。

三年も彼女を金糸雀みたいに飼い、妊娠すら信じなかった男が、いま目の前で泣いている。

林田朔夜。堪えて。振り返るな。

二度と、同じ過ち...

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