第162章

「太田おばさん~、お久しぶり!」

聞き慣れた声に、赤井弦子の目がぱっと輝いた。

太田おばさんは、向かいの家に住むお隣さんだ。

子どもの頃、両親が忙しくて夕飯を作れない日があると、弦子は自分の小さな丸椅子を抱えて太田おばさんの家に『ごはんをおすそ分け』してもらいに行った。

太田おばさんはいつも笑って迎え入れ、弦子のために、頬が落ちるほどおいしいワンタンを一杯作ってくれた。

「ほんとに、久しぶりだねえ。この子は」

太田おばさんはその場で目を細め、しわくちゃになるほど笑った。

狩野柏斗がさっと前に出て、太田おばさんの手に提げられていた油の缶を二つ受け取る。

「……あら? こちらは?...

ログインして続きを読む