第163章

「……これで、もうあいつも私に絡んでこないと思う」

林田朔夜はグラスを持ち上げ、ひと口だけ酒を含んだ。

「ちゃんと、全部話した。完全に」

赤井弦子は少し迷ってから、胸の奥に引っかかっていた言葉を口にする。

「……朔夜。結婚のこと、彼に嘘つくべきじゃなかったと思う」

林田朔夜は、あのアパートで起きた出来事を思い出して、こめかみが痛くなった。

胸の中に絡みついたものは、乱れた糸玉みたいだ。ほどけない。引きちぎれもしない。

「とにかく……想定外のことが起きた。結果がこうなっただけ」

林田朔夜は淡々と言う。

「嘘かどうかなんて、もうどうでもいい」

赤井弦子は、林田朔夜のそばに長い...

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