【第25章】

A市、藤原本家。

婚約披露宴はきっかり4時間続いた。藤原承弦と宮本奏夢は腕を組み、途切れることのない祝福を受け取り続ける。

午後2時。ようやく最後の客が帰っていった。

藤原承弦はひとりテラスへ出た。指先に挟んだ煙草の火が、ゆっくりと灰をつくる。遠くを見ていた。

遠藤暁星がテラスに上がったとき、目に飛び込んできたのは、その背中だった。

「承弦さん」

遠藤暁星の声は低く、いつもの気怠い調子が消えている。

「知ってる? 林田朔夜が昨夜、誘拐された」

藤原承弦の指が、ぴくりと強ばった。煙草が、ぐしゃりと音を立てて二つに折れる。

「……何だって?!」

「太田強の手の者だ」遠藤暁星は...

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