【第30章】

林田朔夜の言葉を聞いた瞬間、藤原承弦は思わず息を止めた。

説明したあとに返ってくる反応はいくつも想像していた。怒鳴る、泣く、震える、黙り込む――けれど、今のはそのどれでもない。

胸の奥に、じわりと制御不能の感覚が這い上がる。

気づかないまま怯えを滲ませ、硬い声で言った。

「お前を、行かせない」

眼差しは剥き出しの所有欲で満ちている。

「時間をかけて……俺を好きにさせる」

林田朔夜は一瞬きょとんとし、すぐ薄く笑った。

「契約はもう満了ですよ。藤原社長、今さら反故にするんですか?」

藤原承弦は眉をひそめる。

「お前は自分の都合で、出ていけると思ってるのか?」

「藤原承弦」

...

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