【第37章】
車はマンションの前で止まった。
林田朔夜はドアを押し開け、外へ降りる。
背後が静かすぎて、思わず振り返った。藤原承弦は車内に座ったまま、微動だにしない。
ただ冷えた顔で、運転手に軽く手を振った。
エンジン音が唸り、車は夜の闇にすっと溶けていく。
林田朔夜は少し呆けたまま、エレベーターの壁に背を預けた。数字が点滅しながら上へ昇っていくのを眺める。
……怒ってる。
さっき彼が投げてきた言葉が、遅れて刺さる。
「お前の中に、悔しいって気持ちはないのか?」
考えてみて――たぶん、ない。
悔しさって、期待があって初めて生まれるものだ。彼女はもう……何も期待していなかった。
部屋へ...
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