第50章
腕の中の彼女から、長く穏やかな寝息が伝わってくる。鼻先の吐息が藤原承弦の下腹にふわりとかかり、じわりと熱い。
彼は目を開けたまま天井を見つめ、呼吸のリズムを必死に整えた。
この瞬間、藤原承弦の頭の中がどれほど甘く絡みついているか。どれほど自分が苦行を強いられているか。誰にも分かるはずがない。
さっき、シャワー中にうっかり林田朔夜を目にしてしまった。あの一瞬だけで、冷水をさらに五分も浴びる羽目になったのだ。
抱き上げたときの、あの柔らかい身体。息が勝手に荒くなる。
そして今、彼女は全身を彼にぴたりと寄せている。鎖骨が襟元から少しだけのぞき、剥いたばかりのライチみたいに艶めいていた。
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