第53章

ジャックは固まった。彼女がそんな反応をするとは思っていなかったのだろう。ほんの一瞬、手の力が抜ける。

林田朔夜はもう彼を見ない。身体をひるがえし、そのまま脇をすり抜けて廊下の奥へ歩いていった。

林田朔夜は、あの席には戻らなかった。

藤原承弦にメッセージを送る。体調がよくないから先に帰る、と。

返ってきたのは短いひと言だけだった。

「分かった」

マンションに戻ると、シャワーを浴びてベッドに横になる。

疲れているのに、眠れない。頭の中がぐちゃぐちゃだった。

藤原承弦が皆の前で彼女を紹介したときの、あの真摯で、どこか誇らしげな目。

それと重なるように、ジャックの言葉が何度も刺さっ...

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