第60章

雨宮雲が雨宮淑の車椅子を押し、来た道を戻っていく。林田朔夜はその背後にぴたりとつき、一歩も遅れなかった。

本当なら、遺産分割の場に外野が居座るべきじゃない。理屈は分かっている。

それでも――車椅子に座る、その背中が気になってしまう。胸の奥に刺さった不安が、どうしても「帰る」という一歩を踏み出させなかった。

玄関まででいい。せめて様子だけ見て、無事を確かめてから帰ろう。

一方その頃。

牧野芳美と雨宮華は、弁護士の到着を待っていた。

「さっきの女、知り合い?」

牧野芳美がふいに口を開く。感情の起伏が読み取れない声。

「見たことないな……母さんの助手とかじゃない?」

「助手?」

...

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