第61章

牧野芳美は、もう崩れ落ちる寸前だった。

理解できない。何十年も経ったというのに、母の胸に居座っているのは――牧野彩枝のままなのだ。

彩枝は、芳美からすべてを奪った。なら、手段を使って奪い返したって何が悪い?

太田は牧野婆さんに長く仕えてきた。牧野家が抱えてきた長年の因縁も、誰よりよく知っている。牧野芳美がどんな人間か――それも。

「申し訳ありませんが」太田は真正面から切り返した。「あなたには聞けません」

「牧野大奥様から、くれぐれもと仰せつかっております。悪意ある者まで孫娘の行方を追いかねない、と」

牧野芳美の顔色が、青から白へとめまぐるしく揺れた。人前で平手打ちを食らったみたい...

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