第64章

藤原承弦に自分の世話をさせる? ありえない。

SMなんて、なおさら論外。

ただ――彼女が昔、ナイトクラブで働いていた頃に、そういう噂を耳にしたことはあった。

まさかジャックが欲に目が眩んで、ここまで警戒を解くとは。

林田朔夜は胸の奥で嗤う。

――チャンス、来た。

彼女は壁際へ歩き、いかにも吟味しているふりをした。視線が、太くて黒いロープに止まる。

これだ。

ロープを外し、ジャックの前へ戻る。

ジャックは床に跪いたまま顎を上げ、彼女を見つめる。瞳には興奮と期待がぎらついていた。

「縛って」

震えが混じった声。

林田朔夜は何も返さず、しゃがみ込んでロープを彼の手首に巻きつ...

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