第69章

雨宮淑はホテルのスイートルームに座っていた。窓の外には、海市の湿り気を帯びた夜の景色が広がっている。

手にはティーカップ。けれど、一口もつけていない。

やがて扉が開き、雨宮雲が一人の男を伴って入ってきた。

まだ若い男だった。服装は地味で、眉間にも目元にも、長く外を駆け回ってきた人間の疲れが染みついている。

雨宮淑が雇った私立探偵だ。海市で、もうしばらく調べを進めていた。

「進展はありましたか」

雨宮淑が口を開く。その声には、本人すら気づいていない怯えがにじんでいた。

男はうなずいた。

「分かりました。林田家の墓は、あの山の上にあります」

そこでいったん言葉を切る。

「ただ...

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