第80章

柳川夏苑の情緒がようやく落ち着き、深い眠りに落ちたのを見届けてから、藤原承弦は病院を出た。

マンションに戻った頃には、もう深夜だった。

灯りはつけない。物音を立てないように身支度を済ませ、寝室へ入る。

林田朔夜は、もう眠っていた。

藤原承弦はそっとベッドに身を沈める。

――と、横で朔夜が小さく身じろぎし、ぼんやりと目を開けた。

「……帰ってきた?」

寝起きの掠れた声。

「うん」

短く答えて、腕を伸ばし、彼女を抱き寄せる。

「今日、仕事が立て込んでてさ。起こしたか?」

朔夜は首を横に振り、彼の胸に頬をすり寄せた。言葉は眠気に溶けて、ふにゃりと曖昧になる。

「おつかれさま...

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