第81章

声はぐっと落としているのに、滲む苛立ちまでは抑えきれていなかった。

「今の彼女、神経が過敏なんです。そんな話を聞かせたら――晴天の霹靂ですよ!」

藤原承弦は答えない。

「この前、あなたの婚約の話が出たときだって……一度、自殺したんです」森本青は目を赤くした。「それが、今また……」

藤原承弦は眉間を深く刻む。柳川夏苑の病状が、ここまで重いとは知らなかった。

「……これからは、彼女の前でそういう話はしない」

長い沈黙のあと、低い声が落ちた。

「治ったら、きちんと説明する」

森本青はまだ何か言いたげだったが、藤原承弦は取り合わない。踵を返し、そのまま病室へ入った。

病室は静まり返...

ログインして続きを読む